ひなまつりの定番のお菓子の由来とは?桃の節句について深く知ろう
2019年3月1日
3月3日はひなまつりですね。
ひなまつりは春の行事ですから、この季節が来ると「春が来たな」と感じます。
この時期になると、お菓子屋さんからスーパー、コンビニまで、ひなまつり向けのお菓子や食べ物がたくさん並んでいる光景を目にしますよね。
そんなひなまつりに食べられるお菓子ですが、どんな種類があるかはご存知でしょうか。
この記事では、ひなまつりの由来や食べられるお菓子などについて、くわしくご紹介します。
ひなまつりとは
ひなまつりとは、日本の伝統的な行事の1つで、女の子の健やかな成長を祈って行われるお祭りです。
伝統的には、ひな人形を桜や桃などの木などで飾り付け、ひな菓子をお供えし、ちらし寿司などひなまつりに関わりの深い食べ物を、みんなで楽しむ行事。
3月3日に開催される行事ですが、これは新暦になってからの日付です。
もともとは、旧暦の3月3日ごろに行われていましたから、4月上旬前後ともう少し暖かい季節に行われていました。
なぜ桃の節句と呼ぶの?
ひなまつりのことを「桃の節句」とも呼びます。
その理由は、女の子の成長を願う行事で「桃の木などで飾り付けるから」や「桃の花が咲く季節だから」などの説が有力。
また桃の節句と呼ばれる前は、もともと「上巳の節句(じょうし・じょうみのせっく)」と呼ばれていたのだそうです。
これは3月のはじめの巳の日(みのひ・へびの日の意)を指していて、3月3日ではありませんでした。
ですが上巳の節句は、少しずつ女の子のためのお祭り「桃の節句・ひなまつり」として姿を変えながら、日付も3月3日と定まったのです。
ひなまつりの由来
もともと上巳の節句は、中国の「上巳の日に体を水で清める」という文化に由来するものなのだそうです。
これが平安時代に日本へと伝わり、京都の貴族の女性が遊びとしてはじめたのだとか。
ひなまつりが「ひな遊び」とも呼ばれる理由も、儀式ではなく遊びとして楽しまれていたことに由来するそうですよ。
また紙で作ったひな人形を、身の穢れと共に川に流す「流し雛」となり、この人形遊びが上巳の節句と結びつくように変わりました。
これが「ひなまつり」として、全国へと広まっていったのだそうです。
少しずつ文化が絡み合って変わっていく様子は、なんだか興味深いし、とてもおもしろいですよね。
ひな人形とひな菓子
ひなまつりに欠かせないものといえば、ひな人形とひな菓子ですよね。
ひな人形の原型は、先ほども出てきた紙で作った人形を川に流す「ひな流し・ひな遊び」です。
その後、少しずつ変化をしながら、女の子の厄を祓ったり、守ったりするために祀られるようになります。
江戸時代に入ると、現在の形へと少しずつ近づき、平安装束を忠実に再現した精巧なひな人形が作られるようになりました。
このころには、災厄をひな人形に身代わりさせる厄除けとして、嫁入り道具にもなります。
そして桃の節句の日には、かならずひな人形が飾られるようになり、そこにお供えされるものが「ひな菓子」というわけです。
ひなまつりに食べるお菓子の種類
ひなまつりに食べられるお菓子の種類は、今ではたくさんあります。
ですがもともとは、つぎのお菓子がひな菓子として食べられていたもの。
- ◆菱餅(ひしもち)
- ◆ひなあられ
- ◆引千切(ひちぎり)
現在では「桜餅」なども、ひなまつりのお菓子として食べられていますが、意外にも最近になって食べられるようになったそうです。
ここからはそれぞれのお菓子について説明します。
菱餅(ひしもち)
菱餅は「赤・白・緑」の3色で作られる菱形の餅で、桃の節句の時期のみに作られる和菓子です。
一般的には3色のイメージが強いですが、じつは地方によって、2色から7色まで、いろいろなものが作られています。
地域によって、込められている意味に違いがあるからこそ、色にもバリエーションがあるのでしょうね。
菱餅の意味・由来
菱餅に使われている「赤・白・緑」の色には、それぞれ意味や由来があります。
赤は「山梔子(クチナシ)」で色付けされるのが本来のあり方で、厄を祓って解毒する、という意味があるそうです。
白はそのまま「純粋・清浄」などを意味します。春の残り雪を表している、ともいわれているそうですよ。
緑は「蓮の葉(ハスノハ)」で色付けされ、緑の新芽で健やかさと穢れを祓う、という意味があります。
菱形である理由は諸説あり、「菱のような生命力や繁殖力から子孫繁栄を願った」「心臓を模している」などいくつかの説があるそうです。
ですが菱形である正式な理由は、今でもわかっていないみたいですね。
また全国各地でさまざまな菱餅の形があり、三角形のものがお供えされたり、別のお餅を使ったりと、多くの特色ある風習が残ります。
ひなあられ
ひなあられは、菱餅と同様に「赤・白・緑」の3色からなるあられです。
関東ではうるち米を炊いて乾燥させたものや、軽く炒った豆を、砂糖で味付けしたものが多いです。いわゆるポン菓子のようなものですね。
着色は、あられに直接色付けする意外にも、色の付いた砂糖を使うなどの方法がとられます。
このような関東風は全国で見られ、東海地方や近畿地方以外では、このタイプが多いようですね。
関西ではもち米を、エビや海苔などを使って着色して作られ、塩味の一般的な「あられ」と同様です。
また東海地方では、円柱状の独特の形をしたあられで、甘い味付けがされており、関東と関西のどちらとも違うものだとされています。
ひなあられの意味・由来
ひなあられの赤には「生命力」を、白には「残り雪」を、緑色には「新緑の芽」を表しているとされています。
いずれも女の子が健やかに育つように、という願いが込められたものなのでしょう。
また4色である地域もまれに見られ、その場合は四季(春夏秋冬)を表しているそうです。
正確な由来は分かっていないようですが、一説には「雛の国見せ」と呼ばれる風習から始まったのだとか。
雛の国見せとは、ひな人形を外に持ち出し、外の景色を見せてあげるという風習で、このときに外でみんなで食べたものが「ひなあられ」なのだそうです。
さすがに今の精巧なひな人形を、外に持ち出すのは重たいしむずかしいでしょうから、ひな人形がまだシンプルな作りであった時の風習なのでしょうね。
こんな逸話を想像しながら、ひなあられを食べるのも楽しそうですね。
引千切(ひちぎり)
引千切とは、京都のひなまつりに、かならずといっていいほど食べられる和菓子です。
よもぎ餅などを伸ばして、真ん中にくぼみを作り、その上に餡を乗せたもの。
餅のふちは引きちぎった跡のようなものを作りますが、忙しい時に餅を丸めるひまもなく、引きちぎって作られたのがはじまりなのだそうです。
またもともとは、餡ではなく草餅に味噌を乗せていたのだとか。
色はほかのひな菓子と同様に「赤・白・緑」であることが多いですが、それ以外にもバリエーションがあります。
引千切の意味・由来
ひなまつりと引千切の正確な由来はわからないようです。
ですが引千切は別名「あこや餅」とも呼ばれていますが、「あこや」はアコヤ貝、つまり真珠貝のこと。
「真珠のように大切な女の子」「真珠を大切に守る硬い貝」といった意味があるそうです。
いずれにしても、ひなまつりに食べられるお菓子ですから、女の子を大切に思う気持ちを表したものであることに、違いはないでしょう。
桜餅(さくらもち)
ひなまつりでは定番のお菓子として食べられている桜餅。
関東では長命寺餅と呼ばれ、小麦粉と砂糖や、白玉粉を混ぜて焼いたもの生地でこしあんを2つ折りで包み、塩漬けした桜の葉で包んだものです。
関西では道明寺餅と呼ばれ、道明寺粉で作られた粒の形が残るお餅で、あんこを包み、塩漬けした桜の葉で包んだもので、形は丸いことが特徴。
関東風・関西風のどちらも、もともとはひなまつりに食べられているものではありませんでした。
桜餅の意味・由来
もともと桜餅は、ひなまつりに直接関係のあるお菓子ではありません。
ですが桃や桜の花が咲く季節であったり、女の子をイメージさせるピンク色であることなど、食べられるようになった理由が想像できますよね。
ほかにも男の子の端午の節句には、柏餅を食べることから、これと結び付けられたという説もあります。
何にせよ、桜餅を食べる季節や色合いなどから、ひなまつりに食べられるようになったと考えてよいでしょう。
カステラ
長崎では、ご当地ひな菓子ともいえる「桃カステラ」をひなまつりで食べます。
大きなカステラ生地の上に、食紅や練りきりなどで桃の形を模して飾り付けたもの。
中国の文化と南蛮の文化が融合するようにできたお菓子で、太古には「不老不死の実」と考えられた桃を型取り、めでたいときに食べていました。
それがそのまま桃の節句とも呼ばれる、ひなまつりのお菓子として定着したのだそうです。
長崎では、ひなまつりの定番として知られていますが、それ以外にも出産祝いなどでも贈られることがあるそうですよ。
そのほかのひなまつりに関わりの深い食べもの
ひなまつりと関わりの深いお菓子を中心にご紹介しましたが、ほかにも関係の深い食べ物がいくつかあります。
- ◆ちらし寿司
- ◆白酒
- ◆はまぐり
この3つはひなまつりには、欠かせない料理・食べ物として知られていますよね。
これらの食べ物は、ひなまつりとどんなつながりがあるのでしょうか。
ちらし寿司
現代のひなまつりには、ちらし寿司が欠かせません。
ひなまつりの時期には、いろいろなお店でちらし寿司が売られるようなり、スーパーからコンビニまで、本当にいろいろな場所で並びます。
ですがひなまつりにちらし寿司が食べられるようになったのは、じつは意外と最近のことなのだそうですよ。
いくつも説があり、正確なことは分かっていませんが、過去にひなまつりで食べられていた「なれ寿司」がルーツであった説が有力。
大昔はなれ寿司を食べていましたが、それがだんだんとばら寿司へと変わり、ちらし寿司へと変化していったという説です。
またちらし寿司に使われる、エビは長寿を願い、赤色から魔除けを意味しています。
れんこんは穴の空いた形から、先を見通す賢明さを意味しているそうです。
豆は健康でマメに働く、という意味を持っているのだとか。
このように、具のひとつひとつにも、女の子に願う意味が込められているのです。
白酒
白酒も桃の節句には欠かせない飲み物として知られています。
白酒とは、みりん・焼酎などに、蒸し上げたもち米や米麹を入れて、熟成させてもろみをすりつぶして加えたもの。
れっきとしたお酒ですから、子どもは白酒を飲めません。
ひなまつりに白酒がお供えされるのは、桃が100歳をあらわす言葉「百歳(ももとせ)」から、桃の花と関わりの深い「桃花酒」を飲んだ風習がはじまりなのだそうです。
つまり女の子に「健やかに長く生きてほしい」という願いが込められていたのです。
それが時代が変わるにつれて、白酒に置き換えられるようになった、というわけですね。
白酒は甘酒と混同されやすいですが、まったく別のものなので注意してください。
とくに白酒はアルコールが強いため、子どもが飲めるものではありません。
もしひなまつりに飲ませるのであれば、白酒の代わりに甘酒を飲ませてあげてください。
はまぐりのお吸い物(潮汁)
ひなまつりに欠かせない料理として知られる、はまぐりのお吸い物。
はまぐりの貝殻は、対になっている貝でなければ、形が合いません。
つまり「仲の良い夫婦」を意味していて、すばらしい夫を見つけてほしい、一生添い遂げてほしい、という願いが込められたもの。
はまぐり自体に縁起のよい意味がある、まさに縁起物なんですね。
まとめ
ひなまつりそのものや、桃の節句に欠かせないお菓子の意味や由来についてご紹介しました。
女の子の健やかな成長を願う日であるひなまつり。
毎年なにげなく、ひな人形を飾り付け、菱餅・ひなあられ・白酒をお供えし、ちらし寿司やはまぐりのお吸い物を食べている家庭は多いと思います。
ですがはるかご先祖さまの代から、お供えするものから食べるものまで、すべてが願いを込めて選ばれている縁起物です。
ひなまつりは、その雰囲気を味わうだけでもじゅうぶん楽しいものですよね。
でもせっかくですから、つぎの3月3日には、この記事で知ったそれぞれのお菓子などの意味や起源・由来などを、思い浮かべながら楽しんでみてください。
きっといつもと違う楽しみ方ができると思いますよ。