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ぼたもちとおはぎの違いはなに!?じつは全部同じ4つのお菓子

いろいろな行事で口にすることのある、ぼたもちやおはぎ。

何気なく食べている人も多いと思いますが、どちらもすごく似ているのため、なにがどう違うのか気になったことはありませんか。

私もある時まで、くわしい違いについては知りませんでしたが、じつはぼたもちとおはぎって、基本的には同じものなんです。

ですが呼び分けているのには理由があり、しかもさらに別の呼び名もあることは知っていましたか?

この記事では、ぼたもちとおはぎの違いと、ほかの似ている餅との違い、由来や起源、そしてちょっとしたエピソードについてご紹介します。

そもそもぼたもちってどんなお菓子?

一年の中でも、いろいろな行事で食べられるぼたもちは、もち米とうるち米を炊き上げて混ぜ合わせ、その周りをあんこで包んだ和菓子です。

もち米とうるち米は、粒を少し残すのが一般的。

完全に潰してしまったお餅のような食感ではなく、「あの粒感がとても好き!」という人も多いのではないでしょうか。

またお餅といえば、通常は大福のように、あんこが中に入っているのがふつうですが、ぼたもちは逆になっているのでちょっと変わっていますね。

その理由は諸説あるようですが、あずきの赤色が「魔除け」に効果があると信じられていたことにあるそうです。

お祝いごとにお赤飯を食べるのも、同じように魔除けや災いを払うためなのだとか。

ぼたもちやおはぎが、行事で食べられるのも同じ理由なんですね。

ちなみにあずきの赤色はポリフェノールがたっぷりで、体にとてもよいものです。

 

ぼたもちとおはぎは同じもの

ぼたもちとおはぎって、見た目がそっくりですよね。

それもそのはずで、基本的には同じ食べ物なのですから、見た目も同じになるのも納得ですね。

ではどうやって呼び分けているかというと、それは季節で呼び分けているのです。

  • ◆春の牡丹餅(ぼたもち)
  • ◆夏の夜船(よふね)
  • ◆秋の御萩(おはぎ)
  • ◆冬の北窓(きたまど)

このように4つも呼び分け方があるんですね。

なお一部では、こしあんを使ったものをぼたもち、つぶあんを使ったものをおはぎと呼び分ける場合もありますが、あんによる呼び分けは、地域によっても差異があるようです。

 

春の牡丹餅(ぼたもち)

ぼたもちは、牡丹の花が咲く春の季節のお彼岸に、ご先祖さまへのお供え物にされるもの。

またぼたもちは「牡丹餅」とも書きますが、その名前のとおり、牡丹の花に見立てた呼ばれ方なのです。

お彼岸の供え物にされるのは、別々のものである「お米」と「あんこ」を「合わせる」ことから、自分たちとご先祖様の心を「合わせる」という願いもあります。

時代の流れによって、このような風習は少しずつなくなりつつありますが、思いだけは後世に残していくようにしたいものですね。

 

夏の夜船(よふね)

夜船の由来は少しおもしろいものとなっています。

ぼたもちは、材料であるもち米を搗(つ)きません。

そのため音を立たせずに作れ、ご近所さんはいつもち米を搗いたのか分かりません。

つまり「搗きしらず」となり、そこから「着きしらず」、そして夜の船は暗く、いつ着いたのかわからないことから「夜船」と呼ばれるようになったのだとか。

言葉遊びから名付けられたということですね。

 

秋の御萩(おはぎ)

おはぎの由来はシンプルで、春の牡丹餅と同じく、萩の花に見立てて「御萩」と呼びます。

つぶあんがおはぎ、こしあんがぼたもち、という呼び分けもこの見た目の違いが起源。

つぶあんのザラッと見た目を萩の花に見立て、こしあんのつるっとした見た目を牡丹の花に見立てているのです。

わずかな違いですが、なんだか粋ですし、なかなかおもしろいですよね。

 

冬の北窓(きたまど)

冬のぼたもちを「北窓」と呼びます。

北窓も夏の夜船と同じ言葉遊びが起源で、「搗きしらず」から「月しらず」となり、月が見えない方角は北、そこから「北窓」と呼ぶようになりました。

なぜ季節によって、ここまで呼び方を変えたのかは、今となってはわからないことですが、日本らしい繊細な感覚ですよね。

 

牡丹餅(ぼたもち)と餡衣餅(あんころもち)

ぼたもちとあんころもちも、見た目はほとんど同じです。

ですが先ほどご紹介した4つのお菓子とは違い、あんころもちは明確に違いがあります。

あんころもちは「餡衣餅」と書きますが、その名前のとおり、餅の周りに餡の衣で覆ったもの。

ではぼたもちとどう違うのかというと、中が完全なお餅であることです。

ぼたもちの中は、もち米とうるち米を完全に潰さないものですから、ここが明確に違うというわけですね。

ちなみにあんころもちは、関西地方を中心に、夏の土用に食べる習慣があります。

 

ぼたもち・おはぎの発祥と起源

ぼたもちとおはぎのはっきりとした発祥や起源はわかっていません。

ですが江戸時代の文献には、庶民の身近な食べ物として広く愛されていたことが記されています。

そのころのぼたもちは、砂糖が希少だったこともあり、甘さは控えめかまったく甘くないこともあったのだとか。

今のように甘いぼたもちに変わったのは、砂糖が身近に手に入るようになった明治時代ごろだとされています。

 

ぼたもち・おはぎにまつわる話

「開いた口にぼたもち」

「棚からぼたもち」

「ぼたもちで腰を打つ」

この3つは、思いがけない幸運が急に降ってくる、というラッキーな出来事に関することわざです。

このようなことわざがあるように、ぼたもちは過去からとても愛されていたお菓子であり、非常に身近なものであったこともわかりますね。

 

ぼたもち・おはぎの半殺しってなに!?

ぼたもちやおはぎには「半殺し」という、ちょっと物騒な言葉があることは知っていますか?

特定の地方では、ぼたもちやおはぎのことを「半殺し」と呼ぶことがあります。

ただ聞いただけだと、怖い言葉に聞こえますが、これはもち米の潰し具合のお話。

ぼたもちやおはぎは、基本的にもち米を半分程度しか潰さないことから、「半殺し」と呼ぶようになったのです。

 

全殺し・皆殺しはお米の粒をすべて潰したもの

もち米を半分潰したものが半殺しなら、すべて潰したものは「全殺し」や「皆殺し」と呼ばれています。

もっと怖いですね…。

つまり全殺し・皆殺しは「あんころもち」ということになります。

これらの呼び方は、全国各地で聞かれますが、とくに徳島県や群馬県、東北地方で呼ばれることが多いです。

 

ぼたもち・おはぎの地域による違い

ぼたもちやおはぎは、小豆によるあんこが使われるのが一般的ですが、地方によってはいろいろなバリエーションがあります。

  • ◆ずんだ
  • ◆きな粉
  • ◆ごま

などたくさんの種類があるのです。

さらに大福と同じように、お米の中に餡を入れる地域もあります。

各地でいろいろな風習の影響を受け、少しずつ地域独自のお菓子として溶け込んでいったのでしょう。

 

ぼたもちとおはぎの違いまとめ

ご紹介のとおり、ぼたもち・おはぎが、じつは同じお菓子ということがわかりました。

それだけではなく、夜船・北窓という呼び名もあり、同じお菓子なのに4つも呼び名があります。

明確な理由ははっきりとはわからないのですが、言葉遊びから生まれた呼び方ということ。

このような複雑な言葉遊びの日本人らしい繊細な感覚って、すごく情緒があっていいなと感じますよね。

さらにもち米の潰し方によって、半殺し・全殺しといった呼び方もされたり、使われるあんこが小豆以外のものであったり、地域によってもたくさんのバリエーションがあります。

昔から日本で愛され、ご先祖様への供え物としてぼたもちについて、その呼び方や歴史、起源について思い出しながらいただいてみてくださいね。

 

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