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ガレット・デ・ロワってどんなお菓子なの?フランスの公現祭のためのお菓子

フランスの新年のお祭りである、公現祭(公現節)に欠かせない、王冠の形を模したガレット・デ・ロワというお菓子。

アーモンドの香りがとてもよく、公現祭の期間には、フランスのほとんどの人が口にするほど、とても馴染み深く伝統的なものです。

また同じフランス内の地方によっても、作り方や呼ばれ方が少しずつ異なるのがおもしろいところ。

この記事では、その由来・歴史・公現祭との関わり・レシピ・関連するお菓子など、ガレット・デ・ロワに関わるいろいろな情報を、できるだけ分かりやすくご紹介します。

ガレット・デ・ロワとは

ガレット・デ・ロワは、アーモンドパウダーをたっぷり使ったクレーム・ダマンドを絞り出し、その上にパート・フィユテを乗せ、リーフや渦状の模様をつけて焼き上げたお菓子です。

中に「フェーブ(そら豆という意味)」と呼ばれる、陶器製の特別な人形を入れて焼き上げ、紙の王冠が乗せられるのが最大の特徴。

公現祭の時に家族揃って食べるのですが、切り分けたガレット・デ・ロワに、フェーブが入っていた人は、王冠を被ることができ、一年間幸せが続くとされています。

もともと、はるか昔のガレット・デ・ロワが「フェーブを引き当てた人が一日限りの王様になれる」というもので、これが今の形につながっているのだとか。

 

公現祭とは

公現祭とは、イエス・キリストの公現(顕現)を祝うお祭りで、幼子であったイエスへ、東方の三博士が訪問・礼拝をしたことを祝うキリスト教のお祭りです。

マギの王である遠い国の3人の使者が、キリストに臣従の誓いを立て、正式にキリストが降誕したことを知らしめた日というエピソードが由来。

マギとはペルシャ語で「秘伝を授かった人」とされ、知識を持つ「賢者」などの意味があります。

そんな公現祭の1月6日には「王様のケーキ」と呼ばれる、ガレット・デ・ロワを食べるのが、古くから変わらず守られているしきたりです。

 

ガレット・デ・ロワに欠かせないフェーブについて

ガレット・デ・ロワに欠かせないものといえば「フェーブ」です。

フェーブとは、もともと「そら豆」のことで、とても重要な意味を持っていました。

そら豆は、とても栄養価が高いことから、はるか昔より人々にとって非常に重要な食料だったのです。

かつてガレット・デ・ロワには、今のような陶器ではなく、実際にそら豆(フェーブ)が入れられていました。

伝統的には、集まったメンバーの中で汚れがないとされる、その場で最も若いものによって、切り分けた菓子をだれに渡すか指定されます。

そしてフェーブを引き当てた人は、その日の王となるのです。

 

なぜそら豆(フェーブ)なのか

そら豆は一年中保存が利くために、たくさんの人に好まれた食べ物でした。

春に収穫すれば、冬の終わりまで食べられるので、捧げ物として最適なものとして、お祭りや結婚式などで捧げられ、豊作や子孫繁栄を祈ったのです。

さらにそら豆は、将来植物となる胚を含んでいることから、死者やこれから生まれてくるものと交流する手段としても考えられていました。

またそら豆は、よく見てみると、妊娠数週間めの胎児に似ています。

だからこそそら豆は、陶器製で産着に包まれた赤ん坊(イエス)に、取って代わられたとされているのです。

そら豆は、ほかにもその神聖さから、くじ引きにも使われていたり、とある教会では、パンの中にそら豆を入れ、分割する方法で司教を指名していたそうですよ。

 

現代でもフェーブは特別な意味を持つ

フェーブの神聖さは、現代でも特別な意味を持っています。

なぜなら今ではフォヴォフィルと呼ばれる、フェーブのコレクターが多くいて、なんと取引所まであるのです。

さらに高級な菓子店のガレット・デ・ロワには、宝石のフェーブを入れたものまでおかれているほど。

それほどフェーブは大切にされてる、とても神聖な象徴なのです。

 

フェーブの代わりにコインが入れられることも

ガレット・デ・ロワには、伝統的にはフェーブが入れられるもの。

ですが地域やお店、家庭によっては代わりにコインが入れられることもあり、意味合いとしては通常のフェーブと同じです。

 

フランス語訳ガレット・デ・ロワの意味

ガレット・デ・ロワの意味は、ガレット(Galette)が「平たい円形のお菓子」、ロワ(Rois)が「王様」です。

つまり直訳すると「王様のケーキ」といった意味になります。

公現祭のエピソードをそのままケーキの名前にしているようですね。

 

ガレット・デ・ロワを英語で表すとキングケーキ

ガレット・デ・ロワは、アメリカに入植したフランス人やスペイン人によって伝えられました。

そしてアメリカでの呼び方は、王様のケーキをそのまま英訳した「キングケーキ(King Cake)」です。

ニューオリンズ周辺で食べられることが多く、アメリカ式に変化し、さまざまなトッピングをされるようになりました。

ちなみにフランス式のガレット・デ・ロワは、フレンチ・キングケーキと呼ばれています。

 

ガレット・デ・ロワの起源と長い歴史

ガレット・デ・ロワの正式な起源はわかっていませんが、かなり長い歴史のある伝統的なお菓子ということだけはわかっています。

もともとは太陽信仰にも影響されているとされ、太陽をかたどり、円盤や王冠型にした美しい黄金色で、とてもおいしいお菓子が多くの人に受け入れられたのは必然。

現在では折り込みパイ生地のガレット・デ・ロワが主流ですが、もともとは発酵させたブリオッシュ生地が使われていたそうです。

そしてフランスの南部では、今でもブリオッシュ生地を使った伝統が守られ続けています。

 

ガレット・デ・ロワを巡るパン屋と菓子屋の争い

1440年にひとつであった、パン屋と菓子屋が分けられました。

本来ガレット・デ・ロワは、お菓子に分類されるはずですが、分けられた後もパン屋は、ガレット・デ・ロワを作り続け、自分たちの君主に献上し続けました。

その献上はとても素晴らしいセレモニーと共に行われたため、菓子屋は侮辱されたと怒り、パン屋を相手に訴訟を起こします。

それからかなりの年月が経った1718年、ようやくパティシエ以外が、卵・バター・砂糖を使用することが禁止されました。

ガレット・デ・ロワを巡って、200年以上も争いがあったのですね。

 

ゴランフロと呼ばれたガレット・デ・ロワ

かつてヴァロワ朝の時代(1328〜1589)に、ガレット・デ・ロワを「ゴランフロ」と呼んでいました。

これはゴランフロと呼ぶ方が上品だとされていたためです。

その起源は、ゴランフロという僧侶であり、アマチュアの菓子職人が告解を終えたあとに、ルーヴルでガレット・デ・ロワを作ったからだとされています。

お菓子としてのゴランフロは、ポーランド菓子と同じようにビール酵母を使用した、発酵生地の大きなビスキュイであったことが特徴だったそうです。

 

ガレット・デ・ロワとルイ14世

王朝の最盛期を作り上げたルイ14世ですが、彼が幼いころのエピソードです。

とある公現祭の日、ルイ14世の母であるアンヌ王妃がガレット・デ・ロワを切り分けて配りますが「聖母」の分が残ってしまいます。※ガレット・デ・ロワは最後の1つを必ず残す

これは貧しい人に分け与える分ですが、宮廷に貧者を招くわけにはいきません。

そこでアンヌ王妃は、翌日のミサに行く時に配ると話し、早々に部屋へ戻ってしまいますが、この時に荷物をまとめ、早朝にルイ14世とともに宮殿を抜け出します。

これは当時に反逆者たちがおり、逃げるためだったのです。

あのルイ14世もガレット・デ・ロワを食べていたことになりますが、こんな緊迫する公現祭のガレット・デ・ロワの味は、いつまでも忘れなかったことでしょう。

 

ガレット・デ・ロワの食べ方

ガレット・デ・ロワは、「王冠」や「太陽」に模した見た目だけが特徴的なのではありません。

食べ方も伝統的なルールがあり、今でもフランスの家庭では守られています。

フェーブを見事引き当てた人が、その日の王様になれることは先ほどご紹介したとおり。

そしてその食べ方とルールも、ゲーム性があってとても楽しいものです。

 

ガレット・デ・ロワの切り方

ガレット・デ・ロワに正式な切り分け方はなく、ふつうのケーキカットで問題ありません。

ここまではふつうのケーキと同じですね。

 

ガレット・デ・ロワを平等に配る

ガレット・デ・ロワを切ると、もしかすると生地の隙間からフェーブが見えてしまうかもしれません。

そうするとだれにフェーブが渡ってしまったかが分かりますし、意図的に割り当てることだってできますよね。

そのため伝統的な配り方として、その場の一番若い人(ほとんどの場合子ども)が、ナプキンで隠したガレット・デ・ロワを平等に配るのです。

ほかにもテーブルの下に潜ってもらい、見えない状態でだれに配るかを指定してもらう、という方法もあるみたいですね。

フェーブを引き当てた人は、紙の王冠を被り、その一日だけ王様となり、さらに一年間幸福でいられるのです。

 

ガレット・デ・ロワは必ずひと切れ残す

ルイ14世のエピソードでも触れたように、ガレット・デ・ロワには必ずひと切れ残す、というルールがあります。

これは「神と聖母の分」であり、貧しい人に分け与えられたり、歌を歌いながら家々を回り、喜捨を集める子どもたちに配られるのです。

このようにガレット・デ・ロワには、伝統的なルールと楽しみ方があり、今でも大切にされています。

 

簡単!ガレット・デ・ロワのレシピ・作り方

ガレット・デ・ロワは家庭でも作られていたこともあるように、そのレシピは以外にもシンプル。

手順も簡単ですから、つぎの新年には、自宅でガレット・デ・ロワを作ってみるのもよいかもしれませんね。

もちろん食べる時には、フランス式のルールで楽しんでみてください。

 

ガレット・デ・ロワの材料

できあがりの量の目安:18cm1台分

パート・フィユテ

  • 薄力粉      … 250g
  • 強力粉      … 250g
  • 塩        … ひとつまみ
  • 水        … 250ml
  • バター(シート状) … 500g

クレームダマンド

  • バター      … 50g
  • グラニュー糖   … 50g
  • 全卵       … 50g
  • アーモンドパウダー… 50g
  • 強力粉      … 10g
  • バニラオイル   … 適量
  • ラム酒      … 適量
  • 塗り卵      … 適量
  • フェーブ     … 1個
  • 粉糖       … 適量

 

ガレット・デ・ロワを作る

パート・フィユテ

1、パート・フィユテをつくります

2、パート・フィユテを3〜4mm厚に伸ばし、冷蔵庫で30分休ませます

3、直径18cmと直径21cmにセルクルを使って丸く抜いておきます

仕上げ

1、直径18cmに切り抜いたパート・フィユテを天板に乗せて、クレームダマンドを渦巻状に絞ります(縁から3cm内側まで)

2、きれいにならした後に、フェーブを埋め込みます

3、敷いたパートフィユテの周りに塗り卵を薄く塗り、21cmのパート・フィユテを重ね合わせ、しっかりと縁を押さえて閉じ合わせます

4、セルクルを当てて、余分な生地を切り落とします

5、表面に塗り卵を塗り、ナイフなどを使って模様を入れ、空気穴を空けます

6、200℃のオーブンで30〜35分焼き上げ、その後表面に粉糖をかけ、もう一度オーブンで数分焼いて表面をカラメリゼします

 

ガレット・デ・ロワと関係のあるお菓子

ガレット・デ・ロワには、とても関係が深いお菓子や、似ているお菓子がいくつかあります。

ここではそんなお菓子を4つご紹介します。

 

北フランスのガレット・デ・ロワと南フランスのガトー・デ・ロワ(パン・デ・ロワ)

現在では、先ほどレシピをご紹介した、パート・フィユテを使ったガレット・デ・ロワの方が有名ですよね。

ですが同じフランスでも、南フランスでは、伝統的にガトー・デ・ロワを食べることが多いです。

ガトー・デ・ロワは、発酵させたブリオッシュ生地が使われるのが特徴で、こちらの方が先に作られていたとされています。

 

プロヴァンスとラングドックのロワイヨーム

プロヴァンスとラングドックでは、レモンの皮で香りを付けて、果物の砂糖漬けを宝石として飾った王冠型のブリオッシュが作られています。

このお菓子のことをロワイヨーム(王国の意)と呼び、ガレット・デ・ロワと同じ起源のお菓子です。

 

ボルドー地方のトルティヨン

ボルドー地方では、ロワイヨームと同じブリオッシュ生地に、セドラと呼ばれる大型のレモンの砂糖漬けの詰め物をし、コニャックの香りが付けられているトルティヨンが作られています。

形はねじっただけのシンプルな冠で、男爵冠を模しているそうです。

 

世界には本当にたくさんのお菓子がありますので、また皆さんも是非調べたり・食べてみたりしてくださいね!

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