京都製菓BLOG

和菓子の種類、その奥深さに触れてみたい

シンプルに見えて、その分とても奥が深いのが和菓子の世界。一言で「和菓子」といっても、細かい分類まで含めると、実はその種類は膨大にあります。この記事では和菓子の中でも代表的な種類をご紹介します。

和菓子の種類①蒸し菓子

蒸し菓子とは蒸篭で蒸して作られる和菓子のことです。その歴史は古く、鎌倉時代から室町時代にはすでに作られていました。もともとのルーツは中国大陸より伝わった「点心」です。

 

薬饅頭(やくまんじゅう・くすりまんじゅう)

薬饅頭とは薄力粉と砂糖、ふくらし粉で練った生地で、あんこを包んで作られる饅頭のひとつです。

加熱は蒸すだけととても簡単なため、家庭でも作れますし、観光地での「お土産」になっていることも多いお饅頭です。

 

薯蕷饅頭(じゅうよまんじゅう)

薯蕷饅頭とは山芋をベースにした生地であんこを包み、蒸して作られた饅頭です。

ちなみに薯蕷はそのまま山芋を指す言葉。とてもシンプルな和菓子ですが、菓子職人の技量がそのまま味につながる、とても奥が深い饅頭だとされています。

見た目の美しさもすばらしいですよね。

 

黄味時雨(きみしぐれ)

黄身時雨とは「黄身あん」と呼ばれる卵で作られたあんを使う和菓子です。

あんこを包んで蒸し上げて作られ、黄身あんがひび割れていることが特徴。ひびを秋の時雨の雷に見たてたものだと言われ、とても情緒のある和菓子だといえるでしょう。

 

和菓子の種類②枠蒸し菓子

枠蒸し菓子とは、その名前の通り、枠に生地を流し込んで蒸し上げた和菓子のことです。

出来上がったものを、それぞれの菓子に合わせた大きさに切り分けます。中でも、棒状に切り分けたものは「棹物(さおもの)」として区別されています。

 

浮島(うきしま)

浮島とは卵を使った蒸し菓子のことで、水面に浮かぶ島をイメージして作られたものです。

上品な甘さとほろりとした食感が特徴。卵を使った珍しい和菓子であることから、別名として蒸しカステラとも呼ばれていますが、素材と製法が違うため、まったく別のお菓子に分類されています。

 

観世水(かんぜすい・かんぜみず)

観世水はこしあんと米粉などを混ぜた、そぼろ状の生地を使用したお菓子。

あんを生地で巻き、水の文様に見立てて仕上げたものです。

尚、観世水とは「流れる水は腐らず」という意味合いを持ち、能楽の観世家が定紋に使ったことから取られた柄で、様々な反物などにも使われる柄でもあります。すばらしい情緒のある和菓子ですね。

 

軽羹(かるかん)

軽羹とは鹿児島を中心とした九州の和菓子です。

山芋をふんだんに使った生地が特徴で、空気をたっぷりと含ませて蒸されて作られ、ふんわりとした食感と真っ白な美しさが特徴。コストの兼ね合いから長芋が使われることが多いですが、本来は自然薯の方が適しているといわれ、後者で作られた軽羹はまさに絶品です。

軽羹の歴史はかなり古く、1686年ごろには薩摩藩ですでに作られていました。山芋と砂糖が入手しやすかったことも、軽羹が生まれた要因です。

その後は九州各地に広まりながら定着し、やがて全国へ広がりました。近年では軽羹であんを包む「軽羹饅頭」も、一般的になりつつあります。

 

和菓子の種類③上生菓子

上生菓子とはお茶の席で食べられることの多い和菓子。季節をイメージした意匠を凝らし、とても美しいデザインであることが特徴とされ、お茶の席では最上位のおもてなしとされています。

通常の生菓子との違いは、芸術性の高さや込められたテーマがあることです。伝統的なものはもちろん、今でも新しい上生菓子が生み出され続けています。日本的な情緒が込められた、あまりにも美しい上生菓子は、食べずにいつまでも眺めていたいほどです。

 

ねりきり

ねりきりとは主に関東で作られている、祝儀や茶席に供される和菓子の代表格です。

白あん・砂糖・山芋などを混ぜて練り上げた「練り切りあん」を使い、このあんに着色することで四季の植物、季節にちなんだものを繊細に細工します。

あまりにも繊細なその仕上がりは、芸術作品とも呼ばれ、職人さんの想像力でさまざまなものが作られるのです。作られ始めたのは、砂糖や小豆あんが流通・入手できるようになった江戸時代後期と、比較的最近生まれた和菓子とされています。

 

こなし

こなしとは白あんを蒸して作られる和菓子の生地で、白漉しあんに小麦粉などを加えることもあります。

蒸す工程が入るぶん、ねりきりよりも手間がかかりますが、ほどよい柔らかさと弾力で、よりスッキリとした風味であることが特徴。ねりきりと同じように、四季折々の風物詩や、和歌などにちなんだ情緒のあるデザインであることが多いです。

ちなみに「こなし」という名前は、蒸し上がった生地の固さを調整するために「揉みこなす」ことに由来しています。

 

外郎(ういろう)

外郎は米粉などを砂糖、湯水と練り合わせて枠に流しこんだ後、蒸篭で蒸し上げて作った和菓子。

米粉以外には小麦粉やわらびの粉も混ぜられることが多いです。かなり昔から作られてはいますが、じつは「外郎」と呼ばれるようになったのは江戸時代だとされ、外郎薬に似ていることが起源なのだとか。

最古の記録では、室町時代に外郎の原型がすでに作られていたとされ、今でも全国各地で愛されています。名古屋や宮崎の外郎は、特に有名ですよね。

 

葛饅頭(くずまんじゅう)

葛粉・水・砂糖を煮立て練り上げた生地であんを包み、蒸し上げた饅頭です。

透明で涼しげな美しさを持つ葛饅頭は、まさに夏にぴったりの和菓子だといえます。場所や人によっては、葛饅頭をわらび粉で作るケースもあり「水饅頭」と呼ばれることも。

素材や場所によっても若干変わりますが、透明で透けている饅頭の総称として「葛饅頭」と呼ばれています。

 

葛焼き(くずやき)

葛焼きとは、葛粉・砂糖・あんこで作った生地をよく練り、型へ流し込んで蒸し、適度な大きさに切り分けたあとに焼きあげたお菓子。

素朴な味わいですが奥深く、抹茶と非常に相性がよいとされ、茶席に供されることが多いです。古き良き和菓子ですね。

 

和菓子の種類④流し菓子

流し菓子とは、寒天を凝固させて作るお菓子で、寒天と砂糖などをよく混ぜたあとに、熱いまま枠へと流しこみ、冷まして作り上げます。

近年では技術力の向上から、寒天だけではなく、カラギーナンやペクチンなどを使った流し菓子も作られるようになりました。

 

錦玉羹/金玉羹/琥珀羹(きんぎょくかん)

錦玉羹は寒天を使った、一番基本的な和菓子のひとつです。

作り方もシンプルで、寒天・砂糖(または水あめ)を加えて煮詰めたあとに冷やすだけ。しかし、透明で美しいことから、中に金魚をあしらったものや、小豆を加えて涼し気な意匠を凝らし、夏に関連するものが多く作られていますが、これは熟練された職人技によるものなのです。

錦玉羹と書くのが一般的ですが、金玉羹や琥珀羹と表記されることもあり、すべて同じものです。

 

練り羊羹(ねりようかん)

練り羊羹とは、小豆を中心とした餡を、たっぷりの寒天で固めたもの。

寒天以外にも、小麦粉を使って固める製法などもあり、蒸し固めたものは「蒸し羊羹」と呼ばれ、練り羊羹ととても良く似ていますが少し違います。砂糖を大量に使うことから、とても甘い味であることや、賞味期限がとても長いことも特徴です。

もちろん砂糖をたくさん使うため、見た目以上に高カロリーな和菓子でもあります。

 

水羊羹(みずようかん)

水羊羹は練り羊羹から寒天の量をかなり減らし、やわらかい食感にしたものです。

夏になると、贈答品などによく使われますよね。基本的な製法は練り羊羹と似ていますが、日持ちはあまりしません。

 

和菓子の種類⑤餅・団子

もち米を使ったお餅の和菓子と、うるち米を使った団子のお菓子。どちらも和菓子には欠かせない存在です。

いつものおやつから、祭事やお茶のお供としても欠かない、和菓子の中でも重要なもののひとつでしょう。

 

みたらし団子

みたらし団子は、甘辛い醤油の葛あんをかけた串だんごのこと。

いろいろな場所の名物にもなっていたり、和菓子屋さんでも食べられるため、だれもが一度は口にしたことがあるのではないでしょうか。

みたらし団子の起源は京都の「下鴨神社の御手洗祭」で、氏子で作る神前にお供えしていた団子なのだそうです。もともとは生醤油を付けて焼かれていたものでしたが、1900年代初頭に黒砂糖と葛あんでとろみを付けた今のスタイルを考案したところ、大変人気になり日本各地へと広がりました。

 

柏餅

柏餅とは丸い形で平たく整形した餅にあんを挟み、柏の葉で包んだ和菓子です。

端午の節句で食べられる伝統的な和菓子で、その起源は江戸時代の縁起物だとされています。

 

粽(ちまき)

粽は中国から伝わった餅菓子のひとつで、餅を笹で包んで葉ごと蒸す、または茹でて食べます。

柏餅と同様に、粽も端午の節句の供え物として有名ですよね。日本では甘い和菓子として食べられていますが、中国や台湾では肉や卵なども混ぜ込み塩辛いため、お菓子ではなく軽食に近いです。やはり現地でも端午の節句に欠かせないものです。

 

桜餅

桜餅は餅を塩漬けの桜の葉で包んだ和菓子です。

関東風と関西風に分けられ、似ているようで実は違います。現在では関東風の桜餅を見かけることはほとんどなく、全国的に関西風のものが中心となっています。

桜の風味が季節を感じさせてくれる、とても素晴らしいお菓子です。

 

栗餅

栗餅とは栗の甘露煮とアンコが入った、京都で好んで食べられる和菓子。

秋の味覚である栗をまるごといただくことから、季節を感じられるのがとてもすばらしいお菓子です。京菓子の代表格の一つでもあります。

 

紅梅餅(こうばいもち)

紅梅餅とは梅の形に作られた餅菓子です。

お店によっては梅やシソの風味を加えるところあります。

 

おはぎ

おはぎはもち米とうるち米を混ぜたものを炊き上げ、その周りをあんこで包んだ和菓子。

季節によって呼び方が変わり、春に食べるものを「ぼたもち」、秋に食べるものを「おはぎ」と呼びます。これはお彼岸と関連しており、春には「牡丹」見ごろとなるので「ぼたもち」、秋には「萩」が見ごろになるので「おはぎ」と呼ぶようになったそうです。

またあまり知られていませんが、夏に食べるものを「夜船」、冬に食べるものを「北窓」と呼ぶことも。砂糖が手に入りにくかった時代には、今のように甘いものではなかったそうです。

 

大福

大福はあんこを餅で包んだ和菓子です。

現在では栗やイチゴ、カスタードを包んだものなど、たくさんのバリエーションがあります。

 

和菓子の種類⑥焼き菓子

焼き菓子とはその名前の通り、焼いて仕上げた和菓子のこと。比較的日持ちもしやすく、贈り物としても人気のお菓子です。

 

栗饅頭

栗饅頭は小麦粉と卵をベースにした生地で、栗を混ぜたあんこを包み、オーブンで焼き上げたお菓子です。

栗をあんに使い、また栗を模した形や色つやであることから、主に秋に食べられます。

 

桃山

桃山は京都の伏見城の瓦模様を模したことが始まりのお菓子だといわれています。

白あん・砂糖・卵黄などを生地とし、同じく白あんを包み込んで成形して焼き上げます。そらまめの形状が多いですが、比較的自由に成形可能です。

 

どら焼き

どら焼きは「銅鑼」に見たてた和菓子です。

あんこを挟んで焼き上げたどら焼きは、誰もが一度は食べたことがあるのではないでしょうか。

 

鮎焼き

鮎焼きとはl求肥を鮎の形に成形した生地で包み、焼き上げた和菓子です。

涼しげで初夏にぴったりのお菓子ですね。

 

カステラ

カステラはポルトガルより伝わった南蛮菓子の一つ。

小麦粉と卵を使ったお菓子として、その後の和菓子に大きな変化を与えた重要なお菓子です。

出島のあった長崎のカステラが有名ですよね。

 

和菓子の種類⑦干菓子

干菓子とは水分を減らして乾燥させた和菓子です。八ツ橋なども干菓子に含まれる場合がありますが、一般的には含まないケースが多いでしょう。

正確には水分量が20%以下のものを干菓子、30%ほどのものを半生菓子と区分します。

 

落雁(らくがん)

落雁とは米などのデンプンと水あめ、砂糖を混ぜたものを着色し、型で成形して乾燥させたお菓子です。

保存性がよいことから、神事・仏事のお供え物としてもよく用いられます。

 

干琥珀(ほしこはく)

寒天を使った流し菓子である琥珀羹を、さらに乾燥させたものを干琥珀と呼びます。

干菓子に分類はされていますが、半生菓子に分類されることも。

 

州浜(すはま)

州浜とは浜辺と入江の形を模した和菓子のこと。

大豆・青豆を煎って挽いた、州浜粉と呼ばれる材料を練り上げて作られます。

 

生砂糖(きざとう・きざと)

砂糖に寒梅粉を混ぜた生地を練り上げ、さらに着色し、型を用いて四季折々の葉や花に成形し、乾燥させたお菓子です。

とても繊細な造形で、見て楽しい、食べておいしい和菓子として重宝されています。

ちなみに関東は、雲平とも呼ばれています。

 

有平糖(あるへいとう)

有平糖とは砂糖を煮詰めて作られる、飴やキャンディに分類される和菓子です。

カステラや金平糖とともに、ポルトガルから伝わった南蛮菓子でもあります。

近年では茶道などに用いられることも多く、季節ごとの細工を凝らしたものを楽しみます。

 

いかがでしょうか。一言で「和菓子」といっても、その材料や成り立ち、見た目や味など、非常に奥の深い世界があります。もっとたくさんの和菓子を知りたいと思った方は、一緒にその世界に触れてみませんか?

京都製菓製パン専門学校では、和菓子の歴史や知識だけではなく、実際に自分で作ってその奥深さを学ぶことができますよ!

 

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参考

・おはぎとぼたもちの違い:http://www.seigetsudo-honten.co.jp/park/noshiinfo/ohigan

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